クリエイター編 Vol.5 保有する作品をどう保管・展示するか

自分の作品が集まってきたら、原画・原稿、器、絵画などが自宅や倉庫にも溜まっていく場合があるでしょう。

たとえば、陶芸はギャラリーに卸して委託販売することが多く、作家は原稿を自宅保管しておいて出版社等から展示依頼があった際に渡せば良いので比較的管理しやすいですが、特に絵画・アートは巨大なものも多く、保管・輸送のコストが高く、時価評価が難しいため、悩む人が少なくないようです。

コレクター側にも言えることですが、こういった作品を保管し売却までのタイミングを待つ間、貸出、コレクション展示、美術館の設計を行うことがありえます。
いくつかのパターンをご紹介いたします。

倉庫保管(可能なら追加で貸出)

日本は土地面積が狭いため、自宅やオフィスでの保管・掲示が困難な場合は、寺田倉庫が手掛けている「TERRADA保管サービス」が便利でしょう。
保管・保険・輸送まで対応してくれつつ、併設されたWHAT MUSEUMでの展示にそのまま貸し出せる場合も。

オフィス等への掲示・貸出・販売

自分の作品をオフィスのブランディングとして掲示することも可能です。ただし日本はアート保有・購買に対する税制優遇が米国やシンガポールよりも低いので、節税への寄与はあまりありません。
一定の知名度があれば、アート掲示を請け負っているThe chain museumプラスアートなどでも、貸出に乗せてもらえるようになるかもしれません。

2026年3月にオープンしたスターバックス カフェ & アートギャラリー 谷中御殿坂のギャラリー運営もThe chain museumが手掛けています。

オークションや個人に売るわけではない場合は、販売前提のギャラリー展示、レンタル、展示貸出等がありえますが、作品の知名度もそうですが、条件との整合性が重要になってくるでしょう。
・会社や施設のブランディングと整合している
・値段が先方予算と合っている
・掲示する壁などとのサイズ整合性がある
・保管管理が困難すぎない

私設美術館をやる意義

紙原稿、器、絵画、いずれも、日照、湿度、タバコ、動物の有無などで劣化が早まります。
そのため、太陽光や湿度が管理された場所、かつ、作品が美しく閲覧できる広い場所が求められます。

他方、美術館を建てようとなった時、元々が遊休地であれば商業施設にすることで税金を下げられる一方で、広い敷地面積、界隈のアーティストやコレクターにも賞賛されるような建築、作品保全性の高い施設環境、受付スタッフや警備員の人件費がかかり、特に財団として公共に広く閲覧を許可する場合には過剰な入場料を取ることは難しくなります。

地方にある場合には駐車場、バス停の誘致、送迎バスの手配なども必要になってくるでしょう。

<企業でコレクションしている例>

DIC川村記念美術館(千葉県)- DIC株式会社 [ 運営終了 ] ・創業一族が集めたアートを企業会計で保有し、敷地内に美術館を建設した例です。
・企業保有にすると、その企業が特に上場企業の場合、株主より資本効率の指摘を受けやすくなります。含み資産を売却して事業投資し純利益を上げて株主配当に回すべきという意見が強まりやすくなります。

なお、京都市京セラ美術館の運営元は京都市、ネーミングライツは京セラで、京セラギャラリーとは別物です。

<財団で保有する例>

直島新美術館(瀬戸内)- 公益財団法人福武財団
・ベネッセ創業家と直島町長の構想から始まり、ベネッセの「よく生きる」を地域密着で体現。
・子供達が集う教育文化エリアの構築構想が広がり、結果としてベネッセハウス、地中美術館などへ発展。
・単体収支ビジネスではなく、宿泊飲食や芸術祭と絡めた地域振興を寄付を受けながら行うという方針。

根津美術館(表参道)- 公益財団法人根津美術館
・東武鉄道社長の根津氏の蒐集が基盤。蒐集の展開という意味では川村型に近いですが母体の性格でかなり違いが出ています。
・こちらは美術館単体とカフェになり、宿泊はついてきませんが、観光・人流形成というより文化保全の意義が強いのでしょう。

<キュレーションが中心となる例>

ワタリウム美術館(表参道)- 公益財団法人ワタリウム美術館
・和多利館長が、当時の現代アートであったアンディー・ウォーホル、キース・ヘリングやドナルド・ジャッド等を現地のギャラリーで日本へ紹介し始めたことが発端。
・そのため、収集展示というよりアート文化紹介の色が近く、キュレーション展示、イベント、物販、カフェ展開が中心です。

森美術館(六本木)- 森ビル株式会社
・デベロッパーとしての森ビル株式会社が、ヒルズシリーズへの人流構築を兼ねてキュレーション展示を行っています。
・株式会社による展開ですが、会社名義の資産となる蒐集品の展開であるDIC川村記念美術館とは方針が異なります。

作品管理・相続にあたっての対応

倉庫に預けておいて、時々、展示のために貸し出し、アートの所有権を持つ法人格の売上を増やすというやり方もありつつ、クリエイターが存命で大々的な展開を希望したり、長い間文化として残したいと希望したり、被相続人がクリエイターの活動を世に広めたいということもあるでしょう。

美術館にも様々なタイプがあります。
作品が増えたが財務法務に明るくなく困っている、作品を相続したがどう管理していいかわからない、という方は、お気軽にN.FIELDへご相談ください。
法人格の整理、IP整理、設立した会社や財団の管理などをお手伝いできれば幸いです。
(必要に応じて、弁護士、税理士と連携いたします)

初回相談申し込みはこちらから受け付けております。
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