クリエイター編 Vol.4 IPの保有者は個人と法人のどちらが良いか

Vol.3では著作権について見てきました。
クリエイターの本懐は、やはりオリジナル作品が認められ、クリエイターとして創作したものに値がつき、売れて、多くの方から反響をいただくということだと思います。

自身のオリジナル著作物による一定の売上が出てきた時、所得税/法人税の損益分岐以外に、IPの保有者を個人のままにするのがいいのか、法人に移すのがいいのか、について考えてみたいと思います。

移管の有効性

相続時の予想収益を抑える

著作権を個人のままにしていると、死後に発生する印税等の収益が莫大になる時、被相続人にかかる相続税が高額になってしまいます。
著作権を法人に譲渡して、印税を法人の事業売上としておけば、ほかの事業との通算や経費算入による利益圧縮もより行いやすくなります。(個人の場合は源泉徴収も行われます)

作家個人から法人に著作権を譲渡する

自然発生する著作権は、たとえば、ノートに描いたらくがきや、でたらめな鼻歌を、都度、著作権申請していないことと同じで、登録制ではありませんが、著作権(財産権)として譲渡をすることができます。
※著作者人格権は譲渡できず著作者本人のみに紐付きます

ただし、この時の譲渡は「妥当な時価で売却をした」とみなされることが求められるため、すでに法外な人気を有している作品になっている時、この時価がかなり高くなる可能性は否定できません。
低額譲渡の場合は譲渡税の不当低減、高額譲渡の場合は法人利益削減による法人税低減に捉えられる可能性があります。

移管先の法人の役員に被相続人を含める

家族(配偶者や子供)を役員にして報酬を支払うこと自体は、「生前贈与」とはみなされませんが、以下の条件を満たす必要があります。

  • 勤務実態:全く仕事をしていない家族に高額な報酬を払うと、「不当に高い役員報酬」として経費(損金)算入を否認される場合があります。たとえば「IPの管理」「スケジュールの調整」「グッズの監修」などの業務実態があれば、それに見合う報酬を払うことは、正当な「所得の分散」であり、贈与税はかかりません。
  • 株式譲渡:評価額が高騰した後に無償で有価証券を相続すると、評価額に対して相続税がかかります。他方、相続人が生存中に、法人に出資する形で被相続人が当該有価証券を取得しておけば、有価証券の相続自体が発生しないので相続税は発生しません。

ヒット前は管理委託方式、ヒット後なら完結を待つ

多少なりとも印税の未来収益が見えている場合、譲渡を受けて購入資金を支払う法人側に余資が必要になります。
すでにお金があれば安いうちに移してしまうのも手ですが、相続人がまだ若く、法人に現預金がない場合は、「管理委託方式」として、著作者個人が著作権を保有したまま、商標利用料、作品を用いた物販等のレベニューシェアなどの管理・売上受領をすることができます。

超人気漫画のように爆発的ヒットを起こしている最中の場合は、今後の期待から予想売上額が膨らんでいきますが、完結しブームが去った後であれば、譲渡予定の未来収益評価額を抑えられるので、健康状態が許すのであれば、完結やブーム収束を待つということもありえます。

ただし、美術品など基本的に右肩上がりの作品の場合は、保有作品数x評価額になるので、クリエイター本人がどれほど二次利用権を握っていて、新作を作るかによるでしょう。

実際の評価額計算にあたっては、税理士と一緒に確認するようにしてください。

移管先の法人格について

所有と経営の分離の観点では、相続場面では株式会社が有利です。

  • 役員報酬の上限:役員報酬(給与所得)と配当に対する所得税率が異なります。役員報酬が高額になりすぎる場合は、配当を織り交ぜると税率を下げられる余地があります。
  • 役員退任後に自分が報酬を受領しやすい:代表取締役を退任して株主のみになった場合でも、配当を受領できれば老後資金を受け取れます。

長く続く前提の場合、株式相続は譲渡のたびに評価額計算が行われるため、非営利法人が検討されます。

  • 株式会社の場合、本人が代表取締役をしているのであれば、その有価証券の譲渡税がかかる:一方で財団の場合は、理事や評議員を外れるだけで資産移転は発生しません。
  • 非営利徹底型の場合、寄付額の40%程度を個人所得から控除できる:ただし、財団の場合は、設立時拠出金を残余財産が下回ると解散の上、公的組織または公益法人に資産譲渡となりますため、経営が安定していることが必要です。
  • 奨学金や助成金を運用しやすい:たとえば自身の死亡後に「未来の漫画家育成助成金」などを運営したい時、営利企業でも行えますが、支払額を全て経費算入できなかったり、受領側が非課税にできないことがあります。

非営利徹底型法人の場合、親族を役員に入れる場合、制限が入りますのでご注意ください。